第2章:ボールタッチ:「守」の徹底が自由を作る

「もっとすごい無回転シュートを打ちたい!」
「プロみたいなエラシコができるようになりたい!」
サッカーを覚えたての子供たちは、誰もがテレビの中で観るような華やかなゴールシーンに憧れます。
かつての私も、息子を早く上達させたいという焦りから、派手なフェイントや最新ドリブルテクニックばかりを彼に求めていました。
終いには、◯◯サッカー塾といった教材にも手を出し、夕方の公園は、まるで「魔法の杖」を探し求める練習場のようになっていたのです。
しかし、サッカーというシンプルながらも奥が深いスポーツを学び進めるうちに、私はある一つの事実に突き当たりました。それは、古くから芸道や武道で尊ばれてきた「守破離」という教えです。
すべては「守」から始まる
物事を習得するプロセスには段階があります。まずは師の教えや型を忠実に、愚直なまでに守り抜く「守」から始まるということ。
サッカーにおいて、その「型」の最たるものが「止めて(トラップ)、蹴る(パス)」という、一見すれば誰にでもできそうな基本動作でした。
もっと一言で言えば「ボールタッチ」です。
以前の私は、この「守」を、退屈で当たり前すぎるものと軽く見ていました。ゆえに。いきなり応用(破)や独自性(離)を息子に求めていたわけです。
本当の強さは、派手なテクニックを追い求めた先にありません。この「守」をどこまで深掘りできるか、その追求の中にあったんです。
「守」の極致:ボールタッチという究極の型
世界最高峰のリーグで戦うプロの試合をじっくり観察して、私は衝撃を受けました。
超一流と呼ばれる選手ほど、派手なプレーはありません。地味な「止める」と「蹴る」の精度、いわゆるボールタッチの精度が異常に高いのです。
彼らにとっての「守」の型は、ダイヤモンドのように研ぎ澄まされていて輝きを放っています。
もしその「型」がコンマ数秒でも崩れれば、その瞬間に自由を奪われます。ボールタッチがわずか数センチずれるだけで、相手ディフェンダーにボールを奪い取る隙を与え、一瞬にしてチャンスを棒に振ることになります。
正確な「型」を身に付けてこそ、初めて次の瞬間に、パスを出すのか、シュートを打つのかという「自由な選択肢」が生まれます。
つまり、基礎がない状態での自由は、「偽物」でしかないのです。
これは私たちの日常や仕事におけるコミュニケーションの現場でも同じことです。
相手を圧倒するようなプレゼンテーションや、きれいごとを並べることに一生懸命取り組む前に、私たちは「相手の話を正確に聞き取る」ことができていなければなりません。
そして、「相手が最も望む言葉を返す」ことができなければなりません。
自分の派手なポーズを確立する前に、まずは先人たちが積み上げてきたコミュニケーションの基本の型を、一ミリの狂いもなくマネて自らの血肉とする。
この「守」を貫いた先にこそ、プロとしての揺るぎない深みを得れるのです。







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