第3章:日々のリフティング — 「継続」という名の唯一の近道

「毎日やることが大事なのはわかっている。でも、結果が出ないとモチベーションが保てないし、結局続かない」
多くの人が新しい挑戦を始めても挫折する理由はここにあります。しかし、サッカーにおけるリフティングほど、単調な継続の残酷さと、その先に待つ爆発的な喜びを教えてくれるものはありません。
第3章では、反復練習の地味さの中に隠された「成長の正体」について紐解いていきます。
「毎日やることが大事なのはわかっている。でも、結果が出ないとモチベーションが保てないし、結局続かない」
多くの人が新しい挑戦を始めても挫折する理由はここにあります。しかし、サッカーにおけるリフティングほど、単調な継続の残酷さと、その先に待つ爆発的な喜びを教えてくれるものはありません。
第3章では、反復練習の地味さの中に隠された「成長の正体」について紐解いていきます。
同級生の一言が超えた100回の壁:成長曲線はある日突然跳ね上がる
息子がリフティングを始めた当初、彼は最初の「10回の壁」にぶつかり、何週間も停滞していました。
練習量に対して、目に見える結果が比例しない。この時期、脳内では小脳が必死に「誤差の修正」を繰り返し、神経回路を調整している段階です。外からは見えない水面下で、着々と準備が進められています。
そんなある日のこと。練習場で、息子が同級生の一言を耳にしました。
「僕、リフティング300回できるよ」
その言葉を聞いた瞬間、息子の表情が変わりました。それまでどこか「自分には難しい」と諦めていたかのような顔が、「自分にもできるかもしれない」という強い思いに変わったのです。
その日から、息子の練習に対する意識は劇的に変化しました。以前は私が促してようやくボールを触る程度だったのが、誰に言われるでもなく、食い入るようにボールを見つめ、ひたすらリフティングを繰り返すようになりました。
すると、まるでダムが決壊したかのように、停滞していた記録は嘘のように伸びていきました。20回、30回と、あっという間に最初の目標だった100回の壁を超えたのです。その時の彼の集中力と粘り強さには目を見張るものがありました。
学習における成長は、右肩上がりの直線ではなく、停滞(プラトー)を繰り返した後に垂直に立ち上がる階段状の曲線を描きます。ミエリン化が完了し、新たな神経回路が強固につながる瞬間まで、水面下でエネルギーは蓄積されているのです。
同級生の一言は、息子にとってその「ミエリン化」を決定づける強烈なきっかけとなり、停滞期の努力が一気に報われる爆発点となったのです。10回の壁で諦めるか、それとも跳ね上がる瞬間までボールを落とし続けるか。
この「継続」こそが、ひとつ上のステージに上がれる、最初の境界線なのかもしれません。
ミエリン化とは
ミエリン化(髄鞘化:ずいしょうか)とは、脳の神経細胞の軸索(信号が通るケーブルのような部分)を、「ミエリン」という絶縁体のような脂質の膜がぐるぐると巻き付ける現象のことを指します。
これをイメージしやすく言うなら、「剥き出しの細い電線を、厚いゴムの絶縁テープで補強して、高速ケーブルにアップデートする作業」です。
1. なぜミエリン化が必要なのか
私たちの神経信号は電気信号として伝わります。しかし、生まれたばかりや練習不足の段階では、この信号が通る「電線」は剥き出しの状態です。そのため、電気信号が途中で漏れたり、速度が遅かったりします。
ミエリン化が進むと、以下の2つの劇的な変化が起こります。
・伝達速度の爆速化 ミエリンが絶縁体の役割を果たすことで、信号が膜のない部分を「跳躍」するように伝わります(跳躍伝導)。これにより、信号の伝達速度は最大で100倍近く速くなると言われています。
・信号の正確性 信号が漏れなくなるため、脳からの指令が正確に筋肉や器官に届くようになります。「思った通りに体が動く」のは、このためです。
2. 「練習」がミエリンを厚くする
近年の研究で、特定の動作(サッカーのリフティングや楽器の演奏など)を繰り返すと、その動作を司る神経回路のミエリン化が促進されることがわかっています。
・反復の力 同じ回路に何度も信号を通すことで、脳にある「オリゴデンドロサイト」という細胞が「この回路はよく使うから補強が必要だ」と判断し、ミエリンを巻き付けます。
・「守」の科学的根拠 これまで触れてきた「退屈な反復練習」は、まさにこのミエリンを厚く塗り重ねる作業です。一度ミエリン化が完了すると、意識しなくても信号が高速で流れるため、動作が「自動化」されます。







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